経済危機という先の見えない状況の中では、焦りが生まれることだろう。
「どこまで情勢は悪化するのだろう」「いつまでこんなことが続くのか」
「とにかく何か手を打たなければ」
といった不安と焦りだ。
確かに、何もせずに手をこまねいていることはリスクだ。
しかし、だからといってやみくもに行動に走り、的外れな課題に取り組んだりすると
それこそ大きな代償を支払うことになるだろう。
焦りから生まれる闇雲な対応はその場しのぎになりがちな上、社員達の動揺を招き、意識を決定的な重要なものからそらしてしまう。
不況の暗い影にかくれた、大きなチャンスを見過ごすことになるだろう。
十分に注意しなければならない。
景気後退への初期動作がその場しのぎのものだと、たいてい後になって過剰反応することになる。
例えば、必要以上のコスト削減をして、景気回復したときに逆に高くつくはめになるのだ。
そういった過ちを犯さないために、闇雲な行動は避けるべきだ。
景気後退時の初期において、我々が真っ先に取り組むべき課題は
「経営の安定化」である。
ダウンサイドリスクから身を守り、危機を乗り切るために必要な流動性を確保することだ。
財務基盤の見直しと強化、それが課題となる。
当座の支払いに充てる資金も、将来に向けた投資資金も乏しいこの時期というのは、
流動性を確保することが難局を乗り切る鍵となる。
財務構造の最適化という課題について、
具体的な対策を一部、以下に記載しておく。
1.予想される資金の出入りを計算する。
2.手元資金報告書を週次または月次で更新する。
3.事業部の枠を超えて、キャッシュを一元管理またはプールする。
4.顧客の与信管理を厳格化する。
5.信用リスクに基づいて顧客をセグメンテーションする。
6.与信対象を、信用力の高い顧客か、戦略上重要な顧客だけに絞る。
7.信用リスクと売り上げの増加分のトレード・オフを見極める。
8.運転資金管理を厳格化する
9.生産と調達を監視して、在庫を減らす。
10.顧客への与信を能動的に管理し、売掛金や受取手形などの売上げ債権を減らす。
11.負債やその他の債務を減らす。
12.融資枠を確保する。
13.政府系ファンドなど市場外の投資家を開拓し、自己資本の調達先を確保する。
それから、不況期においては流動性を確保することが重要になるわけであるから、
資本調達を行う上で株価に対する配慮も必要になってくる。
自社の不況対策の状況を、株主や証券アナリストに知らせ、市場の信用不安を軽減させることや、
自社株買いよりも配当を優先させることを検討するなどの対策が必要になってくるだろう。
そうすることにより、競合他社よりも相対的に高い評価を株式市場から受けることができ、
資本調達を有利に行うことができる。またそれは、不況期に潜むチャンスである買収機会を生かす
事にも繋がっていくであろう。