財務基盤を安定させることに取り組んだら、今度は既存事業の守りを強化していく必要がある。
この経済環境の悪化を機会に、経済的ショックに強い企業体質をつくるべきだ。
そして柱となるオペレーションを改善し、将来の重要なビジネスチャンスを逃すことのないように
成長機会を追及していくべきである。
以下に具体的な対策を分野別に一部あげてみる。
1.コスト削減と効率化(Reduce Costs and Increase Efficiency)
●長年続けてきたが事業上の付加価値をほとんど生まない活動を一掃する。
●好景気時には意見がまとまらず、十分な実施ができなかったような効率改善改革を復活させる。
●主な機能を統合または一元化する。
●既存のサプライヤーと調達活動について分析する。
●オフショアリングの経済性を再評価する。
まずはコスト削減と効率アップを図り、今まで実施できなかった往年のイニシアティブを復活させたりして迅速な対応を講じる。不退転の覚悟で望まなければならない。ここで注意すべきは理にかなっている対策でなければならないということだ。将来の重要なビジネスチャンスをリスクにさらしてしまうと、長期的な損失となり良かれと思って行ったコスト削減が逆にマイナスとなってしまうからだ。
2.売上管理の積極化(Aggressively Manage the Top Line)
●顧客維持活動の再活性化を図る
●短期的な売上げを押し上げるために、営業戦略や営業担当者の報奨制度を改める。
●売上げへの即効性を高めるために、マーケティング費用を再分配する。
●値上げと引き換えに、顧客への与信条件を緩和することを検討する。
不況時には極めて手元資金であるキャッシュが大切となるため、積極的に売上げを管理することを心がける。従来の売上げを守ることと、既存事業からさらに稼ぐための手立てをいつけることの両方に努めて取り組む。そのために営業戦略や営業スタッフの報奨を戦術の難易度に応じて引き上げることも検討する必要があるだろう。また、長期的ナブランド構築に目を向けるよりも、マーケティング費の再配分の方が売上げに即効性があることが多い。さらに、顧客への企業間信用には慎重な姿勢で臨む一方で、値上げと引き換えに与信条件を緩和することのメリットについても検討してみるといいだろう。
3.製品ミックスと価格戦略を見直す(Rethink Your Product Mix and Pricing Strategies)
●既存製品の廉価版を販売する
●いまだに顧客が定価で購入することをいとわない製品をみつける。
●成果連動型や定額料金制など、独創的な価格戦略を検討する。
●サービスを分解し、単体価格を採用する。
マクドナルドの100円マックのように、既存製品の廉価版の販売をはじめることで、不況期での消費者の購買行動の変化に対応し、既存顧客を逃がさない。あらかじめ個人と法人双方の顧客ニーズ、購買パターンに景気がどのような影響を及ぼすかを見定めておくことが大切。
また、注意深くセグメンテーションしてみれば、いまだ定価で購入されている製品が見つかるかもしれない。そのような情報を反映させた製品ポートフォリオを構築し投資判断を下そう。さらに価格戦略も見直そう、パッケージ化されていたサービスを個々の要素に分解してバラ売りすることを検討してみたり、製品そのものではなく、製品の利用を購入させる定額料金制を検討することもいいだろう。独創的なファイナンスパッケージを新たに開発し、消費者に新ローンを提供することも売上げを好転させることに即効性がある。
4.投資計画の抑制と資産売却(Rein in Planned Investment and Sell Assets)
●引き締め型の資本政策を策定する。
●好景気時には処分しにくかった非生産的な資産を廃棄する。
●ノン・コア事業を売却する。
過剰設備とならぬよう、設備投資計画を制御し、既存の設備稼働率の最大化を図ることが第一だろう。また、厳格な資本配分方針を策定する必要もあるだろう。この機会にノン・コア事業は売却し、あまり重要でない事業や不採算事業は整理する。これまで閉鎖できなかった工場など、非生産的な資産は不況を機会に積極的に売却し事業資金を捻出すべきだ。
以上が具体的な対策の一部となる。