景気後退期には、投資家のリスク回避の動きから株価は下がるだろう。
どの業界も無秩序に株価は下落するものである。
なので絶対的な株価の下落は避けられないにしても、
せめて、同業他社と比較しての高水準を維持すべきである。
今まで経営の安定化、財務基盤の強化、既存事業の強化について取り上げてきたが、
それがこの「企業価値を高める」という面で大きな力を発揮することになる。
景気後退期の株式市場で好まれるのは、
有利子負債の水準が低く、確実に資金調達することができ、バランスシートが健全な企業の株式である。
このようなキャッシュが潤沢な企業は、株主の反発やヘッジファンドの買収のターゲットになることも
あるが、想定リスクが相対的に低い安定的な投資対象として、投資家から肯定的に評価される。
そういった面で他社よりも高い評価を勝ち取るために、
説得力あふれる投資家向け広報活動(IR)戦略によって、自社が投資対象としてリスクが低い要因を
協調する必要がある。このようにして市場からも資金を調達する道を確保しておくことは、
不況期においての魅力的なM&Aを行うことにつながるなど、チャンスに繋がる。
自社の企業価値を相対的に高めるには、配当政策と自社株買いの計画を見直すといいだろう。
平均的な投資家は自社株買いよりも配当に好意的であることがアメリカでの企業調査によってわかっている。
自社株買いよりも、配当を増配するほうが効果的であるといえる。
平均的に見て、25%を超える増配を続ける企業では、その発表から半年間にわたって企業価値評価(バリュエーション)が相対的に高まっている。
例として、アメリカのディスカウント小売店TJXカンパニーズをとりあげてみよう。
2002年にアメリカが不況に見舞われていた中、TJXは33%の増配を発表した。
すると、発表から半年にわたり、同社のPER(株価収益率)はS&P・スタンダード&プアーズ500株価指数を42%上回った。
このこととは対照的に、自社株買いを選択した企業では、そのほとんどが実施から半年間のバリュエーションにほとんど影響はなかった。
とはいえ、必ずしも増配が好ましいとは限らないため、個別の状況を分析することが必要だ。