厳しい経済環境においては、全社レベルと事業部レベルの双方について
弱みを体系的に評価することが必要である。
さらに、競合他社との比較も欠かせない。自社の強み弱みを客観的に理解することができるからだ。
競合他社のコスト構造、財務状態、調達戦略、プロダクト・ミックス、重点顧客などを把握し
自社のそれと比べてみる必要がある。
他社と比べて自社の弱点を見出し、何らかの対策を講じる必要がある領域を
具体的に洗い出すことは危機対策として有効だ。
弱点を明確にした後、今後の経済環境の悪化シナリオを作成し、
自社と競合他社への影響を評価する。
今後さらに大幅な経済環境の悪化が懸念されるため、
経済危機の展開に沿うかたちで、複数のシナリオを検討するべきだ。
危機の期間と深刻さに応じたシナリオを描く。
1.中程度の景気後退(ダウンターン)
2.より深刻な不況(リセッション)
3.本格的な恐慌(デプレッション)
データを集め、分析し、業界や自社の事業で最も起こりそうなシナリオはどれか
を見極めなければならない。
今回の世界的な景気後退には、当初よりこれまでとは異なる兆候が見られた。
早い段階での銀行の損失の規模が、
過去のS&L危機(1986~1995)、日本の銀行破綻(1990~1999)、
アジア通貨危機(1998~1999)を上回っていた。
また、今回の危機の震源地であるアメリカでは
家庭における負債、企業における負債の合計額がGDPの約380%にも達していた。
これは過去の世界大恐慌が始まった時期のおよそ2.5倍にも及ぶ。
これらのことから、今回は「本格的な恐慌」に陥るケースも十分想定しておく必要がある。
そして、想定したシナリオについて、自社の事業にどのような影響が及ぶのかを
見定めなければならない。
その際に、考えるべきポイントを例としていくつか上げてみよう。
1.消費者の借入能力が制限されると、自社製品の需要にどのように影響するか。
2.雇用不安と資産デフレによって、信用力のある顧客も借り入れを控えるようになるか。
3.需要減の影響は、自社の短期資金調達にも及ぶだろうか。
4.株式相場が下落すると、資金調達しにくくなるかどうか。
5.債券市場や株式市場から資金調達できたとしても、金利や期待収益率の上昇によって資本コストが上昇するだろうか。
6.資産デフレは一体、自社にどのような影響を及ぼすか。
7.キャッシュフローの減少と資本コストの上昇により、営業権がどれくらい変動し、過去の買収案件はどれくらい評価損を計上することになりそうか。
8.原材料価格の低下によって、どれくらい吸収できるか。
などなど、
そういった点を各シナリオに応じて考えてみる必要があるだろう。
その際、最悪と考えられるケースからくれぐれも目をそらしてはならない。
あらゆる状況を想定し、バランスシートに及ぶ影響を定量化する必要があるのだ。