財務基盤については以前も書いたが、
経済危機時においては、しかるべきキャッシュフローと資金調達手段を
確保することは大変重要であるがゆえ、もう少し詳しく書いておくことにする。
流動性が低下してしまうと、それ自体が問題であり、
また事業の将来を考えて投資する能力を絶たれてしまうことになると、
不況期に潜むチャンスを生かすこともできなくなるからだ。
なので、自社の手元資金(キャッシュポジション)の最大化を図るために、
キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入するなどして、支出を削減または先送りするなど
資金流入(キャッシュインフロー)に注意するべきだ。
将来、再融資を受けられなくなるという問題を回避するために、
余剰資金が生じたら内部留保しておくことが賢明だ。
全社レベルで、事業部の枠を超えて資金をプールできるCMSの構築が必要かと思われる。
また、手元資金の詳細を記載した報告書を作成し、週次もしくは月次で更新し、
資金流入と資金流出の予想額を算出し、その中期的な予測もたてるといいだろう。
キャッシュを捻出する手段としては、
運転資本(ワーキングキャピタル)を減らすことも一つの方法だ。
ほとんどのメーカーは運転資本を最適化し、在庫や売上債権などの流動資産を減らすことで10%程度
のキャッシュを捻出できる。
また、キャッシュフロー改善策としては
顧客の信用リスク管理を徹底することも重要だ。これまでのように、企業間信用に基づく取引は
極力避けるべきだ。
分割払いを認めて顧客の購買を支援することは、リスクが高いので減らさねばならないということだ。
しかし、それとは裏腹に
現在の経済環境下では、顧客はますます企業間信用に頼るようになるだろう。
だが、それに応じてしまうと当然ながら自社のリスクが増してしまう。
顧客ごとに信用力を評価し、信用リスクの高い顧客、当該取引の戦略的重要性が低い顧客には
企業間信用は控えるのが望ましい。顧客の債務状況を精査し、再度セグメンテーションしなおしてみる必要があるということだ。
これには、営業部門と財務部門の顧客担当者の強力が欠かせない。
景気後退を受けて自社の財務基盤を強化するために、これまでの戦略を変更することに対して
十分な理解を得ることが大事だ。協力を得られるように報奨を見直す必要もあるだろう。
また、バランスシートを強化するために自社の債務状況も精査する。
借入金や負債、年金債務などを削減することで、財務リスクを減らすと同時に自社のリスク状況について投資家の評価を高めることができる。
自己資本を確保するに当たっては、政府系ファンド、プライベートエクイティ会社、資金力のある投資家、
などの市場外の投資家にも目を向ける必要があるのだ。
このように、最悪のシナリオにおいて想定される流動性の危機に備えて、
今からキャッシュフローの改善に取り組むことが重要である。