米国のIBMは、1940年以降は減収が続いていた。
記録的な損失に耐えていたわけだが、
1990年前半、ルイス・ガースナー率いる同社は
欧州や日本における経済成長の停滞が続くことや価格競争のさらなる激化を見越し、ビジネスモデルの見直しを始めたのだった。
もはやメインフレーム・コンピュータ事業の成長カーブはピークをうち、淘汰されているという事実に目をむけた。
市場の変動に向き合ったIBM社は、ビジネスモデルを再構築し、
ハードウェアメーカーから脱却し、コンピュータ・サービスとソリューションの販売会社へと転換を果たした。
このように、
成功する企業というのは、業界構造の変動に適応し、
競合他社に先んじて自社のビジネスモデルを見直すことができる。
それによって既存事業を守り、優位性を獲得する。
景気後退期というのは、企業や業界にとって変革の時期でもある。
そして大きな変革にはそれなりの痛みが伴うものだ。
争の激化、投入コストの変動、政府による介入、規制強化、新たな貿易対策などで、現在の主軸の事業の経済性に変化が生じる可能性があるのだ。
経営陣はこのような時期、現在の痛みが単に不況によるものであり、耐えしのべばいいものなのか、
それとも市場に構造変化が生じたために、痛みを伴っているのかを見定めなければならない。
もし後者であるのなら、不況を耐え抜いたとしても状況は好転しない。
市場で起こっている変化にいち早く気がつき、他社に先んじてビジネスモデルを見直す必要があるだろう。