原子炉から出る放射性降下物は、2つのグループに分けられる。
1番目のグループは、希ガス(キセノン、クリプトン133)の同位体で、これは化学反応性が非常に低く、比較的半減期が短い体内にはとどまらず、土壌にも沈着せず、空中に分散・残存する。そのため、健康におよぼす有害な影響は限定的である。
2番目のグループは、おもにヨウ素、セシウム、そしてテルルの放射性同位元素に代表される、より危険な放射性降下物である。これらの元素は大気中で微細な浮遊物(エアロゾル)を形成する。
それらは大気中に放出されると自身の重みによって徐々に地表に降下し、そのときにすべての植生、衣服など、あらゆる表層を汚染する。
水資源も含まれる。
最も健康への脅威となるのは、セシウム137(半減期30年)とヨウ素131(半減期8日)である。
ヨウ素131はベータ放出体で、吸入と(食物)摂取を通して血流の中に吸収され、甲状腺によって集中的に取り込まれる。
主として18歳未満の若者にとっては、きわめて甲状腺における発がん性が高い。
セシウムはガンマ及びベータ放出体である。やはり呼吸器系統と胃腸系統を通じて体内に吸収される。やがて血流にも入り、体中に溜まっていく。
セシウムはその半分が体から排出されるまでに10日から100日を要するので、いちど吸収されてしまうときわめて危険だ。
数か月で危険性をほぼすべて失うヨウ素131とは異なり、セシウムは環境中に数百年間、有害なものとして残る。
------------------------------------------------------------
包括的核実験禁止条約(CTBT)放射線核種探知観測所のデータを使ったオーストリア中央気象・地球力学研究所の計算によれば、最初の3日間に福島第一原発から放出されたヨウ素の活量はチェルノブイリの全放出量の30%にあたり、セシウムでは60%であった。
福島には使用中及び使用済燃料1700トンがある。一方チェルノブイリの場合、燃料はわずか180トンしかなかった。福島原発では、現在でも放出は続いているという状況にある。
また、原子炉の冷却に使われたあとの汚染された海水の流出は衰えるところを知らず、一日7000トンのペースで続いており、法的限度量の4300倍にあたる放射性ヨウ素の集中度が計測された。福島沖の海は広範に汚染されている。
フランスの放射性防御・核(原子力)安全研究所(IRSN)は、「原発から20km圏内の汚染濃度はチェルノブイリを超えるだろう」と予測している。
----------------------------------------------------------------
今後も放射性物質は風にのって、日本各地へ散らばっていく。
今後、日本は放射能と長い付き合いになるだろうから、きちんと放射能と向き合わなければならないと思います。